洗濯日和

今日はアンカレッジで休養日．コインランドリーで洗濯をしたり，銀行にキャッシュを調達に行ったり．おまけにカトマイ行きの飛行機代が余りに高いので，一時はカトマイ行きを諦めようと？

今日は休養日のつもりなのだがそれでもやることが多い．まず，明日から5日間滞在するカトマイ国立公園へ行く飛行機の切符の変更をしなければならない．デナリ国立公園に行く前にAir Packという航空会社の便を予約していたのだが，その便だと接続が出来ないということがわかったのだ．アンカレッジ空港まで行ってキャンセルの手続きをし，もう一つの航空会社Mark Airのカウンターへ並んで明日の便の予約をする．ところがこれがものすごい値段なのだ．一人往復で420ドルという目の玉の飛び出るような値段なのである．5年前に行ったときはWien Airという地元の航空会社で，それほど高い値段ではなかったように記憶している．ところがこの会社は倒産して，現在では，Mark Airが路線を持っているのだが，めちゃくちゃな値段のつけようである．一応予約をして金を払うが，どうも気分が悪い．あれこれと金がかかって，現金の持ち合わせが少なくなってきたので，空港からの帰路，銀行に寄ってクレジットカードのキャッシングサービスを受ける．アメリカではクレジットカードの力は偉大である．窓口の女の子に，アラスカは物価が高くて先立つものがなくなっちまったよ，400ドルばかり都合してくれ，と頼むと手早く現金を渡してくれたが，高い物価については否定も肯定もしなかった．きっといい給料をもらっていて，貧乏な東洋人の旅行者を哀れんでいるのだろう，と勝手に決めつけてひがんだ．		アメリカでのクレジットカードのキャッシングサービスは実に簡単．日本のせこいシステムと異なり，利息も手数料も不要．クレジットカードでドル札を買うという感覚．
		アンカレッジ市内の海辺の公園に立つキャプテン・クックの銅像．クック船長はここアンカレッジに錨を下ろしたそうだが，アンカレッジは世界有数の干満の差が激しい港として有名．しかも干潟が多い．係留は大変だったのではないか？この写真は1980年に撮影したもの．
ダウンタウンへ戻る途中，あの航空券はどうしても高すぎると思って，毛皮屋のK氏に相談することにした．K氏の店にはいるとちょうど奥さんや息子たちもいて，挨拶を交わす．まず，デナリ国立公園や，コロンビア氷河の報告をしたあとで，余りに航空券が高いので，カトマイ行きを諦めようかと思っていると話すと，K氏はしばし考えて，
「カトマイはとても素晴らしいところです．あなたも5年前に行っているから知ってるでしょう．カトマイには地球美があるからね．お金はかかるけど，次のチャンスがいつ来るかはわからない．行くことを勧めますね．」
と助言してくれた．この人がそう言うのなら行ってみよう，僕はともかく，女房は一度も行っていないのだから，と考えて行く決心を固めた．5年前の感動的な体験を独り占めにしておくのは女房に悪い．礼を言って店を出る．
次は洗濯である．十日以上も洗濯をしていないからだいぶたまっているのだ．K氏に教えてもらったコインランドリーへ行く．アメリカらしく，巨大な洗濯機や乾燥機が工場の機械のようにずらりと並んでいる．あまりのでかさに，女房が感激して中の様子を写真に撮ったくらいである．いかにも金の無さそうな連中が洗濯ものをかかえてうろうろしている．だが危険は全く感じなかった．洗い終わった洗濯ものを乾燥機にぶち込んで，通りの反対側のピザ屋で昼食を取る．SMALLを頼んだはずなのに，僕たちにとっては特大のピザが出てきた．量もさることながら，味の方もなかなかいけるではないか．アメリカに来てやっと旨いものにありついた気がした．満腹になって戻ってみるとちょうど乾燥も終わっている．万事このようにうまく行けば苦労はしないで済むのだが．洗濯ものを袋に詰め込んで，今度は買物である．カトマイ用の食料品を買い込む．カトマイは車で行くわけではないのだが，いったん着いたら帰るまでテントは動かさないので，少々食料が重くても毎日息を切らして荷物をかついで歩かなくてもよいのだ．5日分だから1日分が多くてもたいしたことにはならない．それでもやはりフリーズドライが中心になってしまうのは仕方の無いところである．
		野鳥のサンクチュアリで見かけたキアシシギとカモの仲間．アラスカやシベリアのツンドラ地帯はは水鳥の繁殖地であり，その保護は彼らの生存にとっては大変重要．
今日のホテルは，昨日のうちに予約しておいたPuffin Innである．午後もかなり時計が回ったのでチェックインをする．やっと自由時間が取れる．昨日見る時間がなくてす通りした野鳥のサンクチュアリーに行ってみることにする．1号線を南に下った街外れである．昨日もちらりと見えたカナダガンや，キアシシギなどを間近に見る．辺りは一面の葦原になっていて，鳥たちには格好の休息場所になっている．汽水域なので，潮が満ちて来ると葦原の水位もあがってくるらしい．ここにも産卵のためのサケが上がってきていた．あちこちの水底に白骨化した死体が沈んでいる．車から降りてしばらく鳥たちの写真を撮ったりする．アンカレッジのような都市の郊外にこんな所があるなんて，とてもうらやましいことである．アラスカと言うと大自然のまっただ中で，辺りには自然が満ち満ちていると思うかも知れないが，アンカレッジという都市で忙しく生活する人々にとってはなかなか自然に接する機会など無いのではないか．だからこそこういう施設が必要になってくるのではないかと思った．ケニアの首都ナイロビの子供たちでも野生の動物を見たことのあるものは殆どいないそうだが，それと同じ事なのかなと感じた．
夕暮れが迫ってきたので，渋滞している道路を何とかダウンタウンまでたどりつき，レストランに入り夕食を食べる．Puffin Innに戻ると明日のための荷造りである．明日，車は返してしまうのですべての荷物は自分たちで運ばなければならない．だから荷造りには完全を期さなければならず，何かと面倒で時間がかかる．さあ，明日はカトマイだ．高い飛行機代を裏切らないような体験が出来るだろうか．

1985年8月5日 (くもり) 「コロンビア大氷河」
1985年8月7日 (くもりのち雨，風強し) 「雨は降るわ，風は吹くわ」

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